もしもダンガンロンパだったら(第四話




三日目。


朝七時。

『オマエラー、おはようございます。朝です、7時になりました!起床時間ですよ~!
さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』


琶月
「うっ・・・うぅ~ん・・・。」

朝から聞きたくもないモノクマの声に起こされて目覚める私。
この放送のせいでいつも朝は寝た気がしない。
気怠い上半身を起こし大きく背伸びをする。そして窓があったと思われる鉄板の方へ私は顔を向けた。
・・・陽、陽の光が浴びたい。

ここにきてからもう、三日間も陽の光に当たっていない。

琶月
「(陽の光って重要だったんだなぁ・・・。時間感覚がおかしくなるし・・・凄く恋しくなる・・・。)」

とりあえず起きて、身だしなみを整えたら食堂へ向かおう。朝になったら食堂に集まるっというルールも作ったしね。

私は簡単に身だしなみを整え、寝癖がないことを確認すると食堂へと向かう。代わり映えしない薄暗い廊下。
食堂にたどり着くと、何人かが既に食堂に集まっていた。
ファン、ルイ、キュー、そして師匠だ。

ファン
「おはようございます。」
ルイ
「琶月さん、おはようございます。」
キュー
「にひひ、おはよう~。」
琶月
「おはようございますー。」
輝月
「琶月。」
琶月
「はい?」
輝月
「寝癖がまだ立っておるぞ。」
琶月
「うぇっ!?あんなに直したのに!?」

私が両手を髪の毛の上にのせて寝癖が立っている所を探す。・・・・が。

輝月
「ふっ、嘘じゃ。ま、仮に立っていた所でワシは教えぬがな。その方が面白そうだ。」
琶月
「あああーー!!酷い酷い!」

・・・師匠がからかってきたのは何だか久しぶりな気がする。ここに来る前までは、師匠はとても無口だっただけに何だか意外。
こんな事考えるのは失礼だと思うけど、師匠も今の状況にちょっと参っているのかな・・・。

そうこうしているうちに、昨日ファンが提案した約束を守るかのように何人かが集まりだし、そしてギーンを除いたすべての人間がここ食堂に集まった。

ファン
「ギーンさんがいないようですね。」
キュー
「あんな奴、いなくていいよ。」

キューが不機嫌そうに喋る。どうやらキューはギーンの事が非常に嫌いのようだ・・・。

ジェスター
「それより、ご~は~ん~。」

話の流れを無視したジェスターが両手で机の上をポンポンと叩く。何故か柔らかそうな音が聞こえてくる。

ルイ
「少々お待ちくださいね。」
ヴィックス
「めしぃ~!」
ボロ
「美味いめし~!!」
ガムナ
「健康的なうまいめしぃ~!!」
キュー
「三馬鹿が言うと物凄いむかつく!?」
ガムナ
「疑問形で文句言われたぞ!?」

半ばお約束と化してきた馴れ合い。
ここを出るための殺人が起きる雰囲気は全くない。
私はその事に安堵しつつ、ルイが用意してくれた美味しい朝ごはんを頂き再び師匠と共に校内を探索することにした。

寄宿舎エリアには食堂とキッチン、コインランドリー、ゴミ処理場・・そして各人の個室がある。寄宿舎エリアは校舎エリアと比べるとそこまで広い印象はない。

食堂とキッチンは散々皆と集まって過ごしている場所なので探索はスルーした。
コインランドリーは昨日の夜、洗濯のために一度訪れている。当然出口は愚か、窓があったと思われる鉄板すらない。
コインランドリーは全部で七つもあり、順番待ちが発生する事はないだろう。・・・ちなみに、コインランドリーという名前になっているが
洗濯器を動かすのにお金は必要ない。仮にお金が必要だった場合は何人か間違いなく不潔になる人が現れた事だろう・・・。

琶月
「ところで、師匠。もし師匠さえよければ着物等全て私目が洗いますけれど。」
輝月
「ほぉ、気が利くな。では頼もうか。」
琶月
「は、はい!!お任せください!師匠の着物や下着とか下着とか下着とか私が綺麗に洗います!!」

意図がばれ即座に輝月の裏拳が飛んできた。結局この話はなかったことにされた・・・・。

また鼻を押さえながら、今度はゴミ処理場へと向かった。
奥にはゴミを燃焼させる機械が置かれており、多分あの中にゴミを放り込んで燃やすのだろう。
ただ、ディバンとファンが話していた通り鉄格子のシャッターが下りていてその機械までたどり着くことが出来ない。

琶月
「うーん、ダストシュートか何かであればもしかすると外に出れる可能性もあったのですが、燃やすっていう手段じゃあれですねぇ・・・。」
輝月
「排気用の通気口が中にあるかもしれぬぞ?」
琶月
「あ、なるほど!!もしかしたらそこから出れるかもしれませんね!!」
輝月
「人が通れる大きさとは限らぬがな。琶月があの中に入ったらワシがあの機械を作動させて琶月を燃やしてやろう。」
琶月
「機械は苦手じゃなかったんですかっ!!?」

・・・こうして、あっという間に寄宿舎エリアの探索も終えてしまった。
話を聞いた通り、結局外に出るための方法や私達を閉じ込めた犯人の情報について何一つ手に入らなかった。

結局、その後は師匠と一緒にまた校舎エリアを探索したり食堂でお茶をしたり自由に過ごして三日目も終えた・・・・。



・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。



四日目の朝。

いつも通り私達は食堂へ集まり朝食を頂いていたが、朝から何人かが苛立っていた。

ガムナ
「あぁぁぁ、くそ!おんなじ所をどんだけ探しても何も手がかりが出てこねぇ・・・!」

この三日間。出口や犯人の手掛かりについて探していたのは何も私達だけでない。
どうやら三馬鹿やキューとジェスター、それとキュピルとルイも一緒になって出口を探していたらしい。・・・よくルイはキュピルに声をかけているが気に入ったのだろうか。その肝心のキュピルは殆ど何もしゃべっていないが・・・・。

何にしても、三日間。これだけの人数で出口について探し続けても見つからない。その事に落胆している人は流石に多かった。

ルイ
「本当にもう・・・ここから出る事は出来ないのでしょうか・・・。」

珍しく食堂に居合わせたギーンが口を開いた。

ギーン
「ふん、だからモノクマも言っているだろう。ここから出たければ殺人を犯せと。」
キュー
「あのさ!!あんたは今すぐここから出て行ってくれない!?」

目の敵にしているキューが叫ぶ。ギーンが不適の笑みを浮かべた。

ギーン
「俺は構わんぞ。夜、寝ている貴様の首を絞めてここから出させてもらおう。」
ヴィックス
「うぇぇー!リアルすぎる事言うなよ!」
ボロ
「つーか夜這いっすか!?」
ガムナ
「俺にも夜這いさせろ!そしてそのでっかいおっぱい揉ませろ!!」
ボロ
「おっぱい!」
ヴィックス
「別名おっぱい!!」

キューから離れていた三馬鹿の元に、物凄い勢いでキューが接近し三馬鹿の顔面にそれぞれパンチを一発お見舞いした。
キューとギーンの喧嘩を余所にファンがルイの事を励ます。

ファン
「心配しなくても良いですよ。科学実験に必要な機材をどうにかして作ったり見つけたりすることが出来れば私が壁に穴をあける薬を作りますから。」
ヘル
「それはそれで凄いな・・・。」
ファン
「とりあえず食材からでも作れるかもしれないので今実験中です。」
ボロ
「マジで!?あとどのくらいで完成しそうなんすか!?」
ファン
「8年ぐらいでしょうかね。」
ガムナ
「んなに待てねえええええええええええ!!!!」

わーわー叫ぶ三馬鹿とキューとギーン。
その集団から少し離れたところでジェスターがキョトンとしながら皆に問いかけた。

ジェスター
「でもさー。そろそろ助けも来ると思うんだけどなぁー。」
ヘル
「は?助け?」
琶月
「そ、それは本当ですか!?」
ジェスター
「んー?だってさー。この学校に閉じ込められて四日も経つんだよ?世界のアイドルでもあるこの私が四日間も姿を消したら今頃警察も血眼になって探しているはずだよ!」

理由はともかく、確かにこれだけの人数で・・それも希望ヶ丘学園の新入生全員が姿を消したとなれば警察も絶対に動いているはずだ。
ジェスターの言っている事は正しい。それならばそのうち必ず特殊部隊とかが助けに来るはずだ・・・。

そう考えていると突如横から下品な笑い声が聞こえてきた。

モノクマ
「ギャーッハッハッハッハッハ!!」
琶月
「うぇっ!?モノクマ!!?」
ルイ
「わっ!!」

何処から現れたのか。何人かが驚きの声をあげ、そして全員がモノクマの方に目を向けた。

モノクマ
「警察だって?警察なんかあてにしているの?ていうかさ、そんなに出たいなら殺しちゃえばいいじゃん?」
キュー
「そうやって煽っても、私達は絶対に人殺しなんかしないよ!・・・一人除くけど。」

そうやってギーンを睨む。ギーンはただ鼻で笑うだけだった。

モノクマ
「はぁ、おまえらってゆとり世代の割にはガッツあるんだねぇ・・・。でも僕的にはちょっと退屈だなぁ・・。
あ、わかった!人の場所も環境もミステリー要素もそろって言うのにどうして殺人が起きないのかと思ったら、そっかー。足りないものがあったね~。」
ヘル
「足りねーものだと?」
モノクマ
「そう!それはずばり動機だよ!!」
ディバン
「・・・動機だと?」
モノクマ
「というわけで皆に動機を与えるために、あるものを視聴覚室に用意させていただきました~。ちゃんと見てよ~?」
ジェスター
「その最後のセリフ、ちょっと私っぽい言い方だから金輪際言わないでね。」
モノクマ
「じゃあね~。」
ジェスター
「無視するなー!」

それだけ言い残すとモノクマはサッと何処かへ飛んでいき消えていってしまった。
・・・再び訪れる沈黙。約一名覗いて。

ジェスター
「ねーねー、モノクマ酷くない?酷いよね?私っぽいセリフ言ってるんだよ?ねーねー。」

ルイの服の袖をぐいぐい引っ張るジェスター。苦笑いしながらジェスターの頭を撫でるルイ。

琶月
「・・・えーっと・・・。・・・見に行きます?」
輝月
「仮に見に行かなかった所で、お主はいずれは気になって夜も眠れなくなるのが落ちじゃ。さっさと見に行くぞ。」
琶月
「あ、待ってください師匠!!」

私と師匠が一番最初に食堂を出て行った。
その後も何人かが後をついてくるのが聞こえる。


・・・・。

・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

視聴覚室に訪れると、最後にここを訪れた時にはなかったものが機材の上に置かれていた。

琶月
「・・・なんですか、これは?」
輝月
「調べろ。」
琶月
「うぅ・・・爆発したりしませんよね・・・。」

私は恐る恐る機材の上に置かれている段ボール箱に手を伸ばした。
蓋を開けると中には、ケースに入った名前の書かれているDVDが段ボール箱に入っていた。

琶月
「・・・?DVD・・?」

段ボール箱の中には師匠の名前が書かれたDVDや私の名前が書かれているDVDなどが入っていた。
恐らくモノクマはこのDVDの事を示していたのだと思われるが・・・。
師匠は私の手から自分の名前の書かれているDVDを半ば奪い取るように手にすると、蓋を開けてDVDを再生しようとした。
・・・が、しかし。

輝月
「琶月!!」
琶月
「は、はい!」
輝月
「再生方法が分らぬ!」
琶月
「あ、私がやります・・・。」

私は師匠の名前の入ったDVDをもう一度受け取ると、それをモニターの横に置いてある機材の口にDVDを流し込んだ。
その後再生ボタンを押すと、内容が再生され始めた。

輝月
「お主はお主のを見るがいい。」

確かに。
私は納得して空いている席に座った。
私が席に座ったところで他の人たちも続々と視聴覚室に入り始め、さっきの私と同じように段ボール箱の中を漁り始めた。
そしてそれぞれが自分の名前が書かれたDVDを持ってモニターのある席へと座っていく。
私もDVDを再生しようとしたその時。

輝月
「琶月!」
琶月
「は、はい!!!」
輝月
「音が出ぬ!」
琶月
「・・・横に置いてあるヘッドフォンをかけてください。」
輝月
「おお、これか。」

・・・今度こそ、私はDVDを再生しヘッドフォンを頭に着けた。


・・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



砂嵐。

再生し始めてしばらくの間は何も映らなかった。

だけど、しばらくして何かがモニターに映り始めた・・・。




琶月
「ん・・・・?」

そこは愛しの師匠が運営を続けている紅の道場。剣の道を学ぶ場所でもあり、私にとっては事実上の自宅でもある。
ああ、懐かしい。たったの四日程しか離れていないはずなのに、どうしてこんなにも懐かしく感じるのだろうか?
そのままモニターを食い入るように見つめていると、場面は変わって紅の道場内にある私の部屋が映し出された。
ちょっと散らかっているけど、大体の物は揃っている。再び自分の部屋を見て懐かしんでいると突如画面は砂嵐となった。

琶月
「ん?あれ?故障?」

そのままモニターを見続けていると、再び私の部屋が映し出された・・・・が、それは散々荒らしまわされ、窓やタンスに押入れなどが滅茶苦茶に破壊されていた。

琶月
「う、うぇっ!!?なにこれ!!」

驚きのあまりに声をあげた。・・・散々破壊され滅茶苦茶にされた部屋の中央に何かが積み重なっている。

琶月
「(・・・あっ!!!わ、わ、私の秘蔵のコレクション!!!!)」

こっそり師匠の部屋から持ち出した着物やら下着やら道具やら・・・。用途はご想像にお任せします・・って、そんな事思っている場合じゃなかった!!
その私の秘蔵のコレクションに向けて、腕しか映っていない何者かが機械のような物を持ち出した。そこでヘッドフォンからモノクマの声が聞こえ始めた。

『うぷぷぷ。こんな物を押入れの中に隠し持っていたなんて君ってば悪い子だねぇ。それもこれが命と同じぐらい大切なんてさ!
そんな君の大事な大事な輝月コレクション。後三日以内にここから出ないと大変な事にっ・・・!』

琶月
「(た、大変な事・・・?それってどういう事・・・)」

『こういう事!!』

まるで私の心の中を読んだかのようにモノクマは叫んだ。そして次の瞬間、やっとの思いで師匠のタンスから盗んだ師匠の着物に火が放たれメラメラと燃え始めた。

琶月
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
輝月
「うるさい!!!」

うるさいと言われてもそう簡単には叫ぶのを止められなかった。
こ、こ、こ、こ、こ、こ、これを安全に持ち去るのにどれだけの時間と作戦と運が必要になったことか!!!
それを一瞬にして燃やされ灰にされてしまった以上、心のどこかにぽっかりと穴が開いた気分だ。
火が他の物に燃え移る前にすぐに放水によって消火されたが、大切なコレクションの一つは灰と化してしまった・・・・。
道場そのものが燃えなくて本当によかった・・・。物凄く大胆な事をしてくれる・・・。

『今回はこれ一個だけで許してあげるけど、あと三日以内に自分の部屋に戻らないと全部僕が燃やしちゃうかもよ?
うぷぷぷぷ・・・うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ!』

そこで映像は途切れた。

も・・・燃やされる・・・?

あと三日以内にここから出ないと私の・・・私の大切な物が全部なくなる・・・・?


・・・・・。

琶月
「(う、う~~~~ん・・・!!!す、すごく・・・すごーーーーっく惜しいけど・・・!!!で、でも・・・・このぐらいなら・・・・人を殺してまで取り返したい・・・ものじゃ・・ない・・かな・・・。)」

いや、それでも惜しいけど人の命と比べたら・・・。
はぁ、モノクマも凄い事してくれるけどこの程度なら誰も殺人を犯さないよね。
そう考えていると突如師匠が叫び始めた。

輝月
「ど、どういうことじゃ!!!ふざけるな!!!」

輝月が拳を振り上げモニターを叩き割る。

琶月
「ひぃっ!!」

私が驚きの声を上げたのと同時に、他の何人かも叫び声や驚きの声を上げる。
ただ、それは師匠がモニターを割ったことによる驚きの声ではなく自らのCDに録画されていた映像を見たものによる驚きの声だった。

ヴィックス
「う、うおわぁぁっ!!?な、なんだこれ!!!?」
ボロ
「な、なんっすかこれ!!シャレにならねーっすよ!!」
ルイ
「う・・・嘘・・・な、これ・・・。」

次々と驚きの声があがる。中には、驚きの声こそあげないものの非常に険しい顔つきをするだけの者もいた。
・・・その中で一際険しい顔つきをしていたのはキュピルだった。他のみんなは青ざめている中、キュピルだけが怒りに満ちたような表情をしている・・・そんな感じがした。

輝月
「琶月っ!!!」
琶月
「は、はい!!」

突如輝月に呼ばれ私は立ち上がった。

輝月
「すぐに、こ、ここから出るぞ!」
琶月
「え、え!?」
輝月
「我が道場が・・・いや、とにかく忌々しき事態が発生した。す、すぐに戻らねば・・・。」

師匠の顔がみるみる青ざめていく・・・・。僅かに体も震えている。
私のCDに録画されていた映像と師匠の発言から考えて・・・恐らく何日以内にここから出なければ道場が壊される、または燃やされるなどといった事が書かれていたのではないだろうか・・・・・・・。
先祖から受け継いだ道場を守り、そして自分の代で終わらせてはいけない。その使命を守る事に命をかけていた師匠にとって
その道場を失うという事は死より恐ろしい事に感じているはずだ・・・。紅の道場は師匠にとって心の柱でもあり、生きている意味でもあり、何よりも師匠の全てもあるはずだから・・・。

琶月
「だ、だけど師匠・・・!!ここから出るには・・・だ、誰かをこ、殺さないと・・・。」

その続きを言おうとした前にヴィックスが叫んだ。

ヴィックス
「く、くそ・・・。な、なんなんだよ・・・。出ねぇと・・・。ここからマジででねぇと!!!!」
ボロ
「た、隊長。何が映ってたんすか。」
ガムナ
「落ち着こうぜ・・・落ち着こうぜ・・・。」
ヴィックス
「ああ、くそが!!」

ヴィックスがかなり荒れている。一体何が映っていたのだろうか・・・。

ヘル
「・・・信じられねぇ・・・。モノクマの奴・・・一体どうすればこんな事が出来るってんだ・・。」
ファン
「・・・まさか私の大切な研究所を破壊しようと考えるとは大変興味深いですね。あれは核兵器を落とされても壊れないはずなのですが。あえて放置してどのような手段で壊すのか見てみたいですね。」
キュー
「思考がおかしいよ・・・。」

それぞれがそれぞれの感想を述べているが、殆どの人間の顔は青ざめている。
そんな中ジェスターだけが何故かニコニコとしていた。

ジェスター
「ふーん、この程度じゃ何とも思わないもん。だって私の一番の大切な物は自分だからね~。私は人間国宝~。」

・・・ジェスターもちょっと思考がおかしい。

ギーン
「愚かな。私を完全に敵に回そうとはな。だが、やつめ。この映像はそう簡単には作れなかったはずだ。一体どうやった。」
キュー
「え、えっとさ・・・。皆落ち着いて?た、確かにここから出たくなるような映像が映ってたかもしれないけど・・・きっとこれはモノクマが作ったCGか何かだよ!」
ボロ
「そ、そうっすよ!!ハリウッドとかに頼んで本物っぽいCGを作っただけっす。」
ガムナ
「おう、そうだよな。ハハハハ。」
ヴィックス
「・・・・・・・・・。」
ボロ
「隊長、マジで顔やばい事になってるっすけど・・・。」

顔色がよくないのはヴィックスや師匠に限らず、ディバンも相当に顔色が悪い。

ディバン
「愚か者だ・・・。救い難い奴だ・・・。」

一体何が映っていたというのか・・・。
だが何にしても・・・・。

琶月
「(・・・皆何日以内にここから出ないと大切な何かを失くされてしまう・・・そんな内容が収録されていたのかな・・・・。)」

だとしたら・・・モノクマが言った通り皆に動機が与えられたことになる・・・。

・・・何だか・・・・とっても嫌な予感がする。



その後は、いつまでもここに居ても仕方がないとキューが発言したことによって
それぞれがそれぞれの場所へと移動していった。

だけど、殆どの人が無口で、そしてやつれた顔をしていた・・・・。

その中でも一際青ざめた顔をしていたのは師匠とヴィックスだった・・・・。
私は自分の部屋に戻り、心の中で何度も「私のコレクションより人の命の方が大事」と何度も呟きながら布団へと潜り、そのまま寝ることにした。

・・・寝て、寝て、寝続ければ・・・。

きっと何もかも忘れられる・・・。


これが夢であればどれ程よかったことか・・・・。


・・・・。


・・・・・・・・・・。


ピンポーン

・・・。


ピンポーンピンポーンピンポーン

琶月
「んぁ・・・。」

すっかり熟睡モードに入っていた中、誰かが部屋のチャイムを鳴らしていた。
寝ぼけた頭で私はベッドから起き上がり、時刻を確認する。

琶月
「・・・11時・・・?」

・・・朝なのかそれとも夜の11時なのか分らない。
でも、あの映像を見たのが大体8時から9時ぐらいだったから・・・2時間ぐらいの昼寝?いや、朝寝?

そう考えている間も部屋のチャイムは何度もなり続けている。

琶月
「は、は~い・・今出ます。」

体がやけに気怠い。
何とか玄関まで歩きドアを開けるとそこには師匠が立っていた。

琶月
「あ、師匠!どうかなさいましたか?」
輝月
「琶月・・・。ちょっと部屋に入れさせてもらえるか?」
琶月
「は、はい!どうぞどうぞ!!何もないですけどゆっくり寛いでください!!」

そう言って師匠を部屋に招き入れ、背中を見せた瞬間だった。
首元に衝撃が走ったかのような感じがした。


・・・叩かれた?


だけど、本当に叩かれたかどうかを知る前に私は意識を失ってしまい床の上へと崩れ落ちた。


・・・・どうして?

まさか・・・・。

私を・・・殺・・・し・・・。




・・・・。


・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





続く


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